夫に見捨てられて以来、ヒステリーのすべてを下宿人たちに向け、不機嫌に暮らすオスマン夫人。彼女の下宿で暮らす住人達は、彼女の「怒りの発作」に耐えて暮らしていかなければならなかった。かつてアルジェリアの独立戦争時代、自らも抗仏隊員だった彼女は、自尊心が失われることを怖れるあまり、自分の欲求と闘うよりも家族や下宿人の態度や行動を厳しくコントロールすることに没頭していた。ある時、娘が恋をしていることを知ったオスマン夫人は、今度は女性として、人間として一人で取り残される焦燥感と、更なる人生の孤独に追い込まれていく。不機嫌に暮らす日々の中で、気が付けば自分ひとりが年老いて、時代も大きく移り変わっている現実を次第に思い知らされるオスマン夫人。彼女が操り、気晴らしを繰り返す下宿という小さな世界は、さながらハレムのようだ。だが、この小さな城砦さえも、今まさに崩れ落ちようとしていた。
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アルジェリアの監督ナディール・モクネシュによる作品。主演女優カルメン・マウラ以外はアルジェリアの俳優で構成されている。「下宿」という1軒の家を舞台に、そこに暮らすさまざまな人生が描かれた作品。ヨーロッパにおけるアルジェリアのイメージは男性主導の世界であり、その女性像は口数も少なく、控えめだと言われている。しかし、この作品では主役のオスマン夫人を通じて、頑固でたくましく、自由に生きる本来のアルジェリア女性の姿が描かれている。長引く内紛の歴史が、何よりも経済的な理由となり、その真の姿を伝えられるような映画製作に結びつかなったアルジェリア。今までは他国の作品を通じてしか語られることのなかった本来のアルジェリアの姿を、自国とフランスの人々に向けて描き出されているのが特徴だ。頑固で不機嫌なオスマン夫人の半生の重さは、そのまま故国の紛争の歴史を物語っている。














