1999年12月27日。ある中堅ホテルで「ミレニアム・ナイト」と銘打った特別サービスが実施された。それは、新婚カップルなら1泊19,99ギルダー(約1,200円)で宿泊できるというキャンペーン。格安の宿泊代に、当日は数え切れないほどの新婚カップルが殺到する。ヤッピーから貧しい人々まで、人種や年齢層もバラバラのカップルに加えて、ストレートにゲイと、身分も生き方も性志向もさまざまな人間たち。民族衣装を着たモロッコ人カップル、花嫁に付いてきてしまった母親、パンクの若い2人、80歳は超えているように見える老齢のカップルなどなど。まるで、コレクションブックのようにこの夜、このホテル以外では、生涯交わる機会もなかったであろう人達が一夜に会してしまったことで起こる数々のドラマ。一軒のホテルが、人生の舞台そのものであり、ひと部屋ひと部屋で、それぞれの人生を演じている人々。たった一夜の群衆劇を通じて、現代オランダ社会の縮図が垣間見えてくる。
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ロッテルダム映画祭のアジア映画部門を担当していたマルト・ドミニカス監督の劇場映画デビュー作。身分や暮らし振りの極端に異なる人々を、ホテルという一つのフレームに収めて、撮り上げていくことで、それぞれが抱える人生が、綴れ織りのように描かれている。
旧植民地としての成り立ち、決して肥沃ではない国土。周辺諸国から、さまざまな人種と文化が流入して成り立った国、オランダの縮図が一軒のホテルを舞台に、見事に表現されている。身分も生き方も異なる人々が一堂に会する様子は、オランダの人々が長い歴史の中で、繰り返し経験してきた、異文化とのぶつかり合いそのものなのである。一夜が明ければ、ある者は和解し、ある者は最後まで理解しあえないまま、自己のアイデンティティを抱えて自らの居場所へ戻っていく。他者とのぶつかり合いは、同時に自己と向き合う瞬間も意味することになる。
また、かつて豊かではなかったオランダの人々の中には、豊かさを求めて国外を目指す傾向が強く、歴史的にも貿易で発展した経緯があり、ヨーロッパにおけるオランダ人像は、現代でも金銭に対する執着が強いというイメージがある。作品タイトル「19,99ギルダー(約1,200円)の夜」と、劇中で繰り広げられる、シニカルなコメディーを、この意識を前提に考えるとさらに面白い。












