既に歴史のひとこまなのだという人たちもいれば、人生の一部だという人もいるかも知れない…。なかには 再び訪れる‘秋の約束事’となっている人もいるだろうし、またある人々にとっては、一年間に亘る準備の集大成の時とも言えるだろう。
大阪ヨーロッパ映画祭は今年10周年を迎えました。この節目は、私たちがこれまで歩んで来た道のりを振り返り、改めて見直す時でもあります。過去9年間本映画祭に於いて、ヨーロッパから選りすぐりの傑作の数々が、日本で初めて上映されてきました。そして同時に、ナヴィン・アンドリュース、ジャコ・ヴァン・ドルマル、ドリス・ドリー、パトリス・ルコント、ピーター・デルモンテ、ジャック・ペラン、ビル・プルマン、イザベル・ルートそしてヴィム・ヴェンダースといったゲストの参加が、映画祭に尚一層彩りを添え、彼等の興味深いコメントや見解は、観客とのディスカッションを活気あるものにしてくれました。
このような思いから今回、『アンコール特集』と題し、過去9年間の上映作品のうち、特に国際的に喝采を浴びた作品を特集し、プログラムに加えました。 この10年間、映画産業は、大きな変遷の中にありました。その折々の世界を映像が表現する際の視点と方法、それらの映像が様々な媒体を通し視聴者または観客のもとへ届けられる過程とその方法、そして人々の作品の見方といったような様々な面に、著しい変化が窺えました。また、知的かつ芸術的に水準の高い優れた作品を取り上げる機会や時間も、残念ながら減少しています。
既にこれまでも、プログラムの準備段階、そして資金活動を進める過程のなかで提起されてきた課題、即ち『なぜ映画を作るのか、また、なぜここ大阪で映画イベントを開催するのか』という疑問に、10周年を迎えた今、より明確な答えを出していく必要があります。もちろん、映画を作る目的と、映画祭に於いてこれらの映画作品を上映する目的とは、ある意味で共通していると言えますし、この問いかけには、既にこれまで毎年、映画祭でお答えしてきました。即ち、映画市場といった商業目的を越える思想や表現形式が失われないようにしていく必要性、そして、世界が避け難いグローバル化の方向へと進むなか、多様な文化の独自性を保つ必要性、人々が生きる姿と社会の現実を映し出す必要性がある事がその理由として掲げられます。
もうひとつ、昨年の二人のゲスト、ジャック・ペランとクリスティアン・フレイが、彼等のスピーチのなかで言及した、すばらしくかつ理想的な理由を加えておきたいと思います。彼等はこう断言しました。「今後、たとえどのような困難な状況に陥ろうとも映画を作り続けるとすれば、それは私たち人間を少しでも変える力を持つ映画が必ず存在すると、強く信じているからである」と。ジャック・ペランはその作品「WATARIDORI」により、何を伝えたかったのでしょう?彼の映画は、この殺伐とした現代社会に於いて、見たいという気持ちを持つ事さえ忘れかけていた美しさを私たちに見せてくれました。クリスティアン・フレイの作品「戦場カメラマン」(日本公開時タイトル「戦場のフォトグラファー」)は、日常、私たちが見るのを避けて来た事実、或いは知らされなかった現実を、人々に真っ向うから突きつけています。今日、二人は感情、感性そして知性という共通の手段を用い、これらの思いを伝えようとしています。そして彼等のこの意図は、この映画祭の担う使命と通じるものがあるように思えます。
今年の映画祭も、ヨーロッパの18の製作国からの作品を取り揃え、これまでと同様、多様性に富んだ内容になっています。長編では、イタリアの偉大な映画監督、エルマンノ・オルミ監督の新作「メディチ家のジョヴァンニ」、ダルデンヌ兄弟監督の待望の一作「息子のまなざし」、そして今年の映画祭の名誉委員長であり、オスカーにもノミネートされた国際的女優、ブレンダ・ブレッシン主演の「ボリスの恋」等の初上映をはじめとする8作、また短編映画では、グランプリ受賞作、ロシア映画の「ポートレイト」をはじめとする2002-2003オーバーハウゼン国際短編映画祭からのセレクションをお送りいたします。
また今年の特別企画として「シネマ・ジャポン」があります。これはヨーロッパの国際映画祭に於いて、高い評価を受けた日本映画に捧げたプログラムで、俳優、監督そしてアーティストとしても知られる奥田瑛二氏の監督作品「少女」も、その7本の作品のひとつとして上映されます。
この様に、大阪ヨーロッパ映画祭は、ヨーロッパ映画を集めた日本に於ける重要なイベントとして、国際的に評価され、メディアからも注目を受けるプログラムをとり揃えています。実行委員会を代表し、この10年間私達を支え続け、さらに今回10回目の映画祭を実現に導いて下さった個人及び諸機関、諸団体の皆様に、心より感謝の意を表したいと思います。そして新たに次の20回に向けて新たな一歩を踏み出すにあたり、ヨーロッパ映画界にとっても、また関西の文化を豊かにするためにも、不可欠なイベントになるよう、今後もお力添え頂きますよう願って止みません。











