91歳の名女優が魅せる
人生最期の瞬間(とき)
所々にまだ森が残るワルシャワ市内。主人公のアニエラは往時を忍ばせる木造の美しい屋敷に、ボーダー・コリーの“フィラ”だけを従え静かに暮らす老婆である。社会主義の下で強いられた最後の下宿人が去り、悠々自適の生活が戻ってくるはずであった。しかし、現実は思い通りにいかない。中年になった息子は孫娘を連れときどき訪ねてくれるが、妻の気持ちを尊重しアニエラが勧める同居に応じる気配を見せない。退屈しのぎに覗き見る隣人たちも彼女を苛立たせる。ニュー・リッチとも言うべき派手な隣人夫婦は、彼女の地所に多大な関心を示し不動産業者や手下の男を白昼堂々と送り込んでくる。裕福ではないが感じの良い若い夫婦の家では、子供らが集まり騒がしく音楽やダンスを練習している。折り目正しく気丈に振舞うアニエラだが、忍び寄る老いには勝てない。ある晩、落ち着きがないフィラの様子で目を覚ました彼女は、隣家で金持ち夫妻の商談に応じる息子夫婦の姿を発見し、みずから屋敷の処分に着手する。














