オーストリアのある村での出来事。巨大な鯨の見せ物を積んだトラックが山道をやって来る。トラックを運転していた興業師は、たまたま居合わせた恋人同士のカールとマリアの目の前で、急に心臓発作を起こして亡くなってしまう。村人達は、持ち主のいなくなった巨大な鯨の見ぜ物を村の広場へ運んでいく。そしてそのまま一年が過ぎたある春の日曜日に、興行師の姪のゾフィーが叔父の遺品を引き取りに来る。それは奇しくも、カールとマリアの結婚式の日でもあった。
カールとその家族は教会の前で花嫁のマリアを待っていた。マリアはカールと結婚することに対して最後の踏ん切りがつかず、花嫁姿のまま村の近くで悩んでいた。そこへ金持ちで犬好きの男ランダウアーがやって来た。彼はマリアが、自分以外の男と結婚するのが気に入らなかったのだ。ランダウアーと口論したマリアは混乱して、偶然やって来たバスで町へ向かう。
そのバスに乗って村へ行こうとしていたゾフィーは、ランダウアーの車に便乗し、事の次第もわからないまま、村に向かう。結婚式の賑わいの中、居場所のないゾフィーは、その夜、見せ物の鯨の中で過ごすことになる。マリアの失踪に傷ついたカールは偶然出会ったゾフィーと語り合っているうちに関係を持ってしまう。その瞬間にマリアに戻ってきて欲しいと願うと、なんとマリアは村に戻っているのであった。しかし、二人は喧曄をしてしまう。 鯨の不思議な力を試してみたくなったゾフィーは、彼女の荷物を持ってきてくれたランダウアーを誘惑する。ところが折り悪しくそこへマリアがやって来る。ランダウアーの望みは、マリアが犬だったらもっと自由に思い通りに扱えるのに、というものだったのだ。その願いが実現して、マリアは犬の姿に変わってしまう。
責任を感じたゾフィ一は、マリアを元の姿に戻すにはもう一度誰かと関係を持つしかないと思い、村長に訳を話す。ところがその話を信じなかった村長は、冗談でテニスコートが欲しいと願う。外に出てみると、なんと村長の果樹園にテニスコートが出現しているではないか。ゾフィーは別の男に同じことを頼むが、やはり男は別の願いがかなってしまう。
こうして噂は広まり、村中の男達が願いをかなえにやって来る。マリアに冷たくされたランダウアーは、開き直り地代を未払いにしているマリアの両親に自分の土地からの立ち退きを要求する。借金の払えない両親は、鯨とゾフィーに望みを託すが、マリアの父は借金が無くなることを願う代わりに、マリアに戻ってきて欲しいと願う。望みが通じてマリアはやっと人間の姿に戻ることが出来たが、絶望したランダウアーが鯨に火をつける。鯨は火を吹きながら山の中を滑り落ちて、湖に枕んでゆく。ゾフィーの姿も鯨と共に消えてしまう。
ゲルマン的ユーモアをふんだんに盛り込み、山の中に出現した「くじら」を中心に人間の欲望を巡るひと騒動が、皮肉たっぷりに描き出されている。












