アウシュヴィッツ強制収容所で非道な人体実験を行っていた医師メンゲレのものと思われる白骨死体が、ブラジル郊外のマナウスで見つかった。集まった報道陣や見物人の中に、彼の息子ヘルマンの姿もあった。人体実験を受けながらも奇跡的に助かった双子の弁護士ミンスキーは、ヘルマンが父親の死を偽装していると疑いをかけ、彼を問い詰める。ヘルマンは幼い頃の記憶や、8年前にブラジルで父と対面した時のことを静かに語り始める。自分の行いを罪として認め、裁きを受けることを望む息子に対し、父は「人を殺したことは一度もない」と、今なおナチスを崇拝していた。平行線をたどる2人だが、生活を共にするうちに、父を理解したいという気持ちがヘルマンに表れてくる。父の悪行と道徳との間で苦しむヘルマンを、父は深い森の奥へと連れて行く。ドイツ人の偉大さを語る父の声を聞き、ヘルマンは目が覚める。空虚さと疎外感を心に残し、彼はブラジルを発った。2年後、父が溺死したとの知らせがヘルマンの元に届く。
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人体実験という大罪を犯した医師である父と、道徳との間で苦悩する息子の葛藤が描かれている。その残虐な行いから「死の天使」と異名を持つメンゲレは第2次大戦中に実在した人物で、本作は息子の証言を基にした小説を映画化。『ベン・ハー』(’59)や『猿の惑星』(’68)など数々の名作に主演するチャールトン・ヘストンが、自身のアルツハイマーと闘いながら本作の撮影に挑んだ。ナチスに傾倒し、信念を貫き通したメンゲレを演じたヘストンは、過去最高と評価される迫真の演技を見せている。罪を認めてほしいと願いながらも、父親を理解したいと苦しむ息子ヘルマンを演じるのはトーマス・クレッチマン。『戦場のピアニスト』(’02)でドイツ将校を演じ、その後も大作への出演が続く人気急上昇中の俳優だ。戦場シーンを多用した戦争映画は数多くあるが、本作は戦争が遺した爪痕による人間関係のひずみを基に戦争を描いた秀作である。なお、本作は今年のベルリン国際映画祭にて世界初上映された。
















