ジャンは自らの営む農場の火事で大事な娘を亡くし、その原因は自分にあると責め続けていた。妻のロールも正常な精神状態を保てなくなり、施設へと移ってしまう。娘を失った忌まわしい場所から逃れるため、また妻の入院費を支払うためにジャンは工場で働き始める。周囲の人々は農夫のジャンに工場勤めは無理だと言うが、彼は仕事に没頭することで過去を振り払おうとしていた。そんな中、ジャンは行方の分からなくなった夫を待ち続ける女性ラビノタと出会う。辛い境遇を決して口にはしないが、心に空いた穴を互いに感じ取った2人は、ぎこちないながらも次第に打ち解けていく。彼らが一緒にいるところを偶然見かけたロールは、さらに精神が不安定になってしまう。同じ工場に勤めるラビノタの兄がパーティーに誘ってくれるなどして、ジャンはつかの間の休息を味わうが、折にふれて娘や妻のことが頭をよぎる。ジャンはラビノタに娘を失った事実を静かに語り始めた。そして溜め込んでいた彼の思いが涙と一緒に溢れ出す。
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2004年ヴェネチア映画祭で2つの賞に輝き、2005年は最優秀劇映画部門としてスイス映画賞を受賞。2006年アカデミー賞外国作品部門ノミネートも囁かれるこの詩的な感動作は、死別の悲しみをぬぐい去ることの難しさ、そして愛する人間を失った人生をやり直すための道程を呈示する。ジャンとラビノタ、互いの持つ空しさが2人を近づけ、互いの持つそれぞれの世界を近づける。スイスと、コソボと。固定ショットの多い静かな画面、ディテールの丁寧な描写、人物のゆるやかな動き、沈黙、あえて触れない核心、色の対比や構図などで表した感情など、抑えた表現手法でこの地方の厳しい暮らしや故郷を離れることの痛みを画面に焼き付けたのはズグリンスキ監督。スイス映画ではあまり見られない文化の混合や多民族といった社会的様相をあぶり出すこの作品は、10歳で祖国ポーランドを離れスイスに移住した監督自身の半生からか。実際、コソボ出身者などから成るアルバニア人共同体をもっとも多く受け入れている国のひとつがスイスなのだ。















