ジャンは44歳のブルーカラー労働者。ジャンの娘マルヴァは冴えない容貌ながらも歌手になる夢を抱いていて、毎週のように歌のコンテストに出演している。ジャンには音楽の知識はまったくなかったが、娘のために熱心に曲を作り、いつかは自作の曲で夢を叶えてやりたいと願っていた。ある日、ジャンは同僚のウィリーとともに、職場を解雇される。家族にも相手にされず、無気力な日々を送っていたある時、ふとしたことから人気絶頂のセクシー歌手・デビーを誘拐することになってしまう。スターの失踪は世間で大きな関心を集め、ミステリアスな話題性とともに彼女のレコードは爆発的なセールスを記録し、デビーのマネージャー・ミカエルは大いに満足していた。脅迫電話をかけるうちに、いつしか誘拐犯であるジャンとミカエルが接点を持つ。ジャンの夢を知ったミカエルは「デビーが安全な状態で姿を消し続けることが可能なら、娘マルヴァを代替としてスターに仕立てる。」と話を持ちかける…。
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この作品で監督をつとめたドミニク・デリュデレはベルギー映画界の旗手として、ヨーロッパでは知名度が高い存在である。
国土の南北をフランス語とオランダ語の、2つの異なった言語と文化で分断されている国ベルギーだが、この作品は、フランス語圏(南側)で製作されたもの。ベルギーでは、映画のマーケットそのものが狭く、年間の製作本数も少ないと言われているが、作品では、ベルギーの現代社会像とそこで暮らす人々の姿がいきいきと描かれている。
家族を愛し、不器用でどこにでもいるような中年の父親ジャンの姿は、そのまま現代の、日本の父親やビジネスマン像に投影されているようで面白い。夫に対しては不機嫌だが、しっかりと家庭を守る妻、親の愛情を理解しながらも素直になれずにいる娘マルヴァ。誘拐された若い女性人気歌手デビーは、スターである以前に、人間らしく暮らしたいと願っている。
人生の後半に差し掛かりながら、仕事も家庭も、満足とは言えなかったジャンは、娘に送った拙い自作の曲を通じて、やがて代替ながらも国民的スターになっていく娘とともに、その夢を叶えていく。
ストーリー展開の面白さも勿論だが、人の心の持つ哀しさと人間模様が、出演者たちの優れたな演技力で、巧妙に描かれている。

















