この作品ではクラウディアという一人の女性が、対照的な二人の男性に出会うことで、自分自身も2つの世界の中で葛藤する姿が描かれている。平穏と混乱、オペラと現代音楽、というように相反する秩序と混沌のはざまで、自分自身の生き方を探している。クラウディアは才能に恵まれ、オペラ歌手になる夢を実現するために日々精進を重ねていた。彼女に希望を託す著名な教師のもとで、厳しいレッスンを受け、迫りつつある重要な声楽コンクールに備えている。そのために規律正しい生活を送り、冒険をする暇もない。
恋人のステファンは、精神的にも経済的にも彼女を支えていた。クラウディアはステファンと彼の幼い娘との三人で仲良く暮らしている。また、ステファンは音楽事務所を始めようと考えていた。もちろん、クラウディアが彼の売り出す一人目の歌手となるはずである。
ところが、ある日偶然スリにあったことでクラウディアの人生はすっかり変わってしまうことになる。バッグを奪ったスリを追う途中で彼女は大切にしていた赤い靴の片方をなくしてしまう。それを聞いた友人が冗談半分で出した新聞広告に応じて、後日その靴を届けたのがポールだった。ステファンとは対照的に、全く型にはまったところの無いポールは、彫刻をしたり写真を撮ったり、時には家具まで作る無頼な芸術家であった。
彼は倉庫をアトリエと住居にして暮らしている。そんな彼は一目見たときからクラウディアが好きになり、彼女を誘う。最初は戸惑うクラウディアも、いつしか型破りなポールに魅かれていく。やがて、ステファンのもとを去って、ポールと一緒に暮し始める。しかし、生活の変化や心の動揺からか、毎日の声楽のレッスンでは、教師から叱られることが多くなる。一方でクラウディアの評判を聞きつけたポールの友達のゲイのミュージシャンから、自分達のグループのレコーディングのために、ヴォーカルをやってくれないかと頼まれるが、全くジャンルが異なるために、こちらも上手くこなせない。
声楽一筋できたクラウディアの規則正しい生き方と、女性関係も含めて自由奔放なポールの生き方とが彼女の中で不協和音を奏で始める。ポールの目を盗んで彼女は電車の中や浴室、時には墓地でも声楽の練習をするが、不安定で混沌とした生活に耐えられなくなって来る。彼女の気持ちは歌手への道とポールへの愛との間で大きく揺れ動く。
そして、声楽コンクールの日がやってくる。練習していた歌を歌い始めるが、うまくいかない。首を振る教師。気を取り直し再び歌い出したクラウディアが歌っているのは、何とオペラではなくポップスだった。素晴しい歌い振りに、審査員達は感心する。こうして声楽コンクールで認められたクラウディアは、ポールの友達のグループでもみんなが満足する歌い振りを示す。それはまるで二つの世界がクラウディアの中でようやく調和をとり戻し始めたかのように。













