ここは神や天使たちが暮らす天界。ある時、神から天使に、失われた「十戒が記された銘版」を地上から捜し出し、天界に持ち帰るよう命が下る。しかし、自らが地球へ降り立つことを禁じられている天使は、代わりにその役目を果たせる人間を地上から見つけなければならなかった。天使が目をつけたのは、有名な政治家の息子で、風変わりな言語学者オノと、ナチス党員の父とユダヤ人の母を持つ天文学者のマックスの二人。恐妻家のオノはアパートに暮らし、名家の生まれも過去の話になりつつあるような、風采の上がらない中年男性。片やマックスも、若くハンサムな好青年だが、とりたてて目立った才能もなく、ごく普通に暮す男性である。彼らは、天からの見えない力で操られ、見ず知らずの二人が出会い、同じく天の意思で引き合わされた女性アダをめぐり、平凡だったそれぞれの人生がドラマティックな展開を遂げていく。「神」をめぐる崇高な宗教観に、人間の本質を絶妙に交差させ、コメディタッチで描いた秀作。
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この物語の原作者ハリィ・ムリッシュは、’93年に本作の基となる小説を出版。900ページ以上にのぼる長編大作は8ヵ国語に翻訳され、ノーベル文学賞に値すると称される大傑作となった。そのため、出版当初から多くの映画監督が小説の映画化に興味を示し、ハリィ・ムリッシュの説得にあたったが、充実した内容の小説だけに、映画化による質の低下を恐れたハリィの承諾を得ることは難しかった。説得にあたった監督の一人で本作の監督となったイェルーン・クラッベは、まず自らの映画製作会社を作った上で2年の歳月をかけてハリィ・ムリッシュの説得に成功したのである。作品のテーマは友情、愛情、偶然、哲学的宗教問題など、実に多岐にわたり、ストーリーもロマンチック、アドベンチャー、コミカルと表情を変え、134分という長編にも関わらず、見るものを飽きさせないスピーディな展開だ。また、作品の背景には、戦後50年にわたるヨーロッパの政治、経済、宗教の歴史が描写されている点も興味深い。製作地であるオランダには、外国人が多く住み、ヨーロッパにおける文化や宗教の交差点になっている。また、作品の舞台となったキューバやオランダ、イスラエル、イタリアもまた、同様の特性を持った国々なのである。















